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「明日から動き出す1つ」を決める。現場課題から実装の最初の一歩を描いた「フィジカルAI共創プログラム DAY2」
現実世界を認識し、判断し、機械の身体を動かす「フィジカルAI」への関心が高まっています。技術開発が進むなか、いま問われているのは、フィジカルAIをどのように現場へ実装していくかです。
2026年8月20日、弊社のイノベーションセンター「netone valley」にて「フィジカルAI共創プログラム DAY2」を開催いたしました。主催はネットワンシステムズ、共催は住友商事株式会社・SCSK株式会社、協力としてNTT西日本株式会社、TechShare株式会社、株式会社クフウシヤ、iPresence株式会社を迎えています。
8月4日に「MIRAI LAB PALETTE」で開催したDAY1は、最前線の知見を「知る」場でした。DAY2では、参加者がワークショップと実機デモを通じて、フィジカルAIを自社の課題に引きつけて考え、次の一歩を探りました。
ゴールは「明日から動き出す1つ」を決めること
オープニングに立った弊社 ビジネス開発本部 イノベーション推進部 部長の門脇広平は、協力企業各社への謝意を述べたうえで、本プログラムの企画にあたり着目した課題を、「出会いの壁」と「自分ごと化の壁」の2つに整理しました。1つは、現場に課題を抱える企業と、AI・ロボティクスの技術を持つ企業が率直に議論する機会が限られているという「出会いの壁」。もう1つは、先進技術に触れても、自社の現場への具体的な落とし込み方を描きにくいという「自分ごと化の壁」です。DAY1・DAY2の2日間は、この2つの壁を越えるために設計されました。
門脇はフィジカルAIの構造を人体になぞらえ、判断を担うAIを「頭脳」、動作を担うロボットを「筋肉」、両者を結ぶネットワークを「神経」と表現しました。ネットワークインテグレーターとして技術をつなぐとともに、企業同士をつなぐことが、本プログラムを開催する目的です。2040年には日本で約1,000万台のAIロボットが稼働し、労働人口6人に1台のAIロボットが働く社会が来るという将来予測を紹介し、AIロボットの普及を見据えた共創の必要性を説明しました。
門脇は、参加者にこの日のゴールを示しました。「今日の終わりに、『明日から動き出す1つ』を決めていただきたい。それが今日いちばんの成果物です」。
技術起点ではなく、現場課題起点。異業種の参加者が「最初の一歩」を描く
ワークショップのテーマは「現場課題からPoCシナリオを立案する」。参加者は異業種で構成された5つのチームに分かれ、各テーブルで1枚の「PoC構想シート」の完成を目指しました。特徴は、活用する技術を先に決めるのではなく、参加者自身が抱える現場課題から議論を始めたことです。まず「誰が、どの現場・業務で、何に困っているか」を付箋に書き出して共有し、複数の企業や業界に共通する課題を選定しました。その後、「どのような状態になれば解決といえるか」を考え、実現に向けて最初に検証すべきことをPoCの形に落とし込んでいきました。
各テーブルには、弊社および協力企業のメンバーがアドバイザーとして参加しました。現場の困りごとを丁寧に聞き取りながら、AI、ロボット、ネットワークなどの技術をどのように組み合わせられるかを共に考え、議論を支援しました。
各チームでは、人手不足や業務負荷、熟練者の技術継承、過酷な環境での点検、遠隔地からの業務支援、地域生活の支援など、多様な現場課題が取り上げられました。
議論を通じて共有されたのは、最初から大規模なロボット導入を目指すのではなく、まず現場の業務や人の動きを把握することや、対象となる作業を絞って検証することの重要性です。技術起点ではなく現場課題を起点に考えることで、各チームは実現したい将来像と、そこに向けた「最初の一歩」を描きました。
後半の冒頭でワークショップを振り返った弊社 ビジネス開発本部 応用技術部 部長の井上直也は、さらに時間を取って議論を続けたいと感じるほど、各チームで活発な意見交換が行われていたと振り返りました。異業種の参加者が「その課題は自社にもある」と共感し、企業の枠を越えて課題や知見を共有する場となりました。
アイデアを具体化する技術に触れる。5つのデモセッションと実機展示
後半はデモセッションとして、5つのセッションが行われました。
弊社 ビジネス開発本部 イノベーション推進部 技術開発チーム エキスパートの塩屋晶子は、テレプレゼンスアバターロボット「temi」を活用した施設ユースケース開発を紹介しました。「temi」は、センサーによる周囲の認識や自律移動などの機能を備えたテレプレゼンスアバターロボットです。セッションではtemiを使った実演も行われ、受付支援や施設内の定期点検を想定した活用方法が紹介されました。
株式会社クフウシヤ 代表取締役の大西威一郎氏は、国産四脚ロボット「AQURO」の自社開発の歩みを紹介しました。同社はルールベースの制御から強化学習へと開発手法を転換し、シミュレーション上で学習した歩行動作を実機に適用し、走破性の向上に取り組んでいます。同社が昨年12月に弊社とnetone valleyで実施したローカル5Gを利用した映像伝送実証では、操作コマンドの伝送遅延が平均66ミリ秒となり、遠隔操縦への適用可能性が確認されました。
大西氏からは、福島第一原子力発電所の廃炉作業へフィジカルAIを適用するという、社会性の高い取り組みも紹介されました。
NTT西日本株式会社 デジタル革新本部 技術革新部 IOWN推進室の磯部智宏氏と弊社 東日本第2事業本部 第2営業部 第3チーム マネージャーの卜部昌樹は、次世代情報通信基盤「IOWN®」とフィジカルAIの関係を解説しました。両社は昨年度、約600km離れた大阪・福岡間をIOWN APN※1で接続し、福岡拠点のGPU上に構築した学習・推論基盤を活用して、遠隔地のロボットを自律動作させる検証を実施しました。セッションでは、拠点間の伝送遅延が約6ミリ秒だったことも紹介されました。
大容量の学習処理は分散データセンターで行い、リアルタイム性が求められる推論はロボットに近い拠点で行うというこの構想により、ロボット本体にすべての演算処理を持たせず、処理の特性に応じて計算資源を分散配置する可能性が示されました。セッションでは、災害対策や無人データセンターなどのユースケースを想定した新たな実証計画も紹介されました。
※1:IOWN® APNは、IOWN®を構成する主要な技術分野の1つであり、エンド・ツー・エンドで光波長パスを提供することにより、高速大容量・低遅延な通信を実現しているネットワークです。将来的には、端末からネットワークまでフォトニクス(光)ベースの技術の導入を拡大し、さらなる低消費電力化をめざします。「IOWN®」は、NTT株式会社の商標又は登録商標です。
SCSK株式会社 ITインフラ事業管掌 ITインフラ事業戦略・企画開発本部 戦略企画部 企画第二課 兼 中部マネージドサービス事業本部デジタルファクトリー部 第二課の濱田悠氏と、同社 ITインフラ事業管掌 ITインフラ事業戦略・企画開発本部 戦略企画部 企画第二課の野崎涼介氏のテーマは、フィジカルAI時代のデータ不足への備えです。濱田氏は、実機で教えた少数の動作データを「NVIDIA Isaac SimTM」上で拡張し、「NVIDIA CosmosTM」で外観の多様性を加えて学習データを継続的に生成・管理するパイプラインを、実際の映像とともに紹介しました。また、実機データのみで学習したモデルでは成功しなかったタスクが、シミュレーションで生成したデータを加えることで成功するという検証結果も示しました。
続く野崎氏は、生成量を増やすほど運用管理が新たなボトルネックになるという課題を指摘し、ワークフロー管理基盤「NVIDIA OSMO」とAIエージェント基盤「NVIDIA NemoClaw」を組み合わせ、データの生成から管理までを継続的に運用する「Data Factory」構想を提示しました。
最後に弊社 ビジネス開発本部 イノベーション推進部 ビジネス開発チームの谷口諒丞が、フィジカルAIに求められるエッジセキュリティを取り上げました。ロボットや制御システムへのサイバー攻撃は、システムの停止や意図しない動作など、物理的な影響につながる可能性があります。デモでは、実機ロボットの設定ファイルに対する不正な変更を想定し、エッジセキュリティ製品が変更を実行前に検知・ブロックする様子を紹介しました。
セッション会場に隣接する実機展示エリアはイベントを通じて開放され、ヒューマノイドロボット「Unitree G1」、四脚ロボットの「AQURO」や「Unitree Go2」、7軸ロボットアーム、temiなどが並びました。
休憩時間や交流会では、実機を囲みながら、参加者と各社スタッフの間で意見交換が行われました。実機展示エリアではPoC個別相談会も含め、ワークショップで活用イメージを描き、実機やデモを通じて関連技術への理解を深める機会となりました。
テレプレゼンスアバターロボット「temi」
ヒューマノイドロボット「Unitree G1」(左)と四脚ロボット「Unitree Go2」(右)
国産四脚ロボット「AQURO」
一人で悩まず、次の一歩を共に踏み出してほしい
〜ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス開発本部 イノベーション推進部 部長 門脇広平より〜
本プログラムを企画した背景には、二つの実体験がありました。一つは、フィジカルAIについて一社だけで悩まれている企業が本当に多いということです。もう一つは、展示会で優れた技術に出会っても、自社にどう落とし込めばよいかが描けないということです。この「出会い」と「自分ごと化」という二つの壁を何とかしたいという思いから、今回のプログラムを考えました。
ワークショップは初めての取り組みでしたが、やってよかったと思っています。業種ごとに似た答えが出るかと思えば、実に多様な課題や解決策が提示されました。特に印象的だったのは、議論の過程で「人間らしさを取り戻す」というキーワードがでてきた点です。酷暑の建設現場や高所のような過酷な環境で働く方々の作業を、ロボットが担えるようになれば、リスクや怪我を減らせます。ロボットが危険性や身体的負担の大きい作業を担うことで、人はより安全な環境で、判断やコミュニケーションなど、人にしかできない役割に時間を使えるようになります。そこまでできたら、本当に素晴らしい世の中になると思います。
現在、AI活用に悩んでいる企業の皆様にお伝えしたいのは、一人で悩まないでほしいということです。多くの企業のお話を聞いていると、実は課題が似ていると感じることがよくあります。そして、課題を解決する糸口となる技術や知見が、すでに他の企業や業界に存在していることもあります。
だからこそネットワンは、特定の技術や立場に偏らないフラットな存在として、企業と企業・課題と技術を「つなぎ」、出会いを共創へと「むすび」、現場と社会が「かわる」最初の一歩を共につくり続けます。現場への実装や活用方法に課題を感じている皆様は、ぜひお気軽にご相談頂きたいと思います。

